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10年後の自動車産業の世界地図【コラム】

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 弊社にも時々、部品メーカー等の自動車関連産業の企業様から問合せを頂きますが、そのニーズの大半が「先に工場をアジアに移転した顧客企業への追随」です。「新規顧客の開拓も含めて進出計画を作られていはいかがですか?」と問いかけても反応はありません。


 日本の自動車メーカーに部品やツールを供給してきた多くの製造業は、品質面では世界的にみて間違いなくトップレベルです。ミスが絶対に許されない過酷な要求に応え続けることで生き抜いてきた技術や品質管理は、他国の自動車メーカーから見て魅力的な製品なはずです。

 しかし、残念ながら日系部品メーカーの海外進出の目的は、海外に進出した自動車メーカーや1次サプライヤーへの対応がほとんどのように見受けられます。しかも、グローバルでのマーケティング活動した結果の意思決定ではなく、必要に迫られて仕方が無くという背景が見え隠れします。はたして10年後、20年後を見据えた時、そのような姿勢で大丈夫なのでしょうか?

 確かに現時点での日系企業の販売台数は世界トップ10位の中に、3位:トヨタ、4位:日産ルノー、9位:ホンダ、10位:スズキと4社が入っており、主要な地位を占めています。残りは欧米企業ばかりで、その他地域からは5位:現代が入っているだけです。*日経新聞2012/2/4より
 しかし、10年後のランキングははたしてどのようになっているのでしょうか?

 家電の世界では韓国、台湾、中国企業に日本企業は完全に追い越されました。10年前はここまで徹底的にやられるとは、当事者も含めて予想してなかったことだと思います。そして、それと同じ現象が自動車業界でも起こらない明確な理由を探すことは困難です。
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 KPMGが2012/3/9に発表したレポートによると、

・2014年までに、中国が1百万台以上の自動車を輸出するようになる(32%)
・2016年時点のBRICsにおける販売台数予測は29~39 百万台
・2025年までに、成熟市場と新興市場が統合される(75%)

 とのことです。開発途上国の人口動態と経済成長を考慮すれば、妥当な予測と思われます。そして自動車メーカーの生産拠点は、当然のように大きな市場の近くの人件費の安いエリアに次々と移転していく運命にあります。そのような環境変化を見据え、優れた技術と品質管理をもつ日本の自動車部品メーカーは何をなすべきか、答えは明確な気がします。

 顧客の単なる後追いからは卒業して、グローバルでのマーケティング戦略を構築してみませんか?BRICs以外にも東南アジアや東・中央ヨーロッパ、そしてアフリカでも大きな変化の兆しが見られます。このチャンスを活かせるかどうかは今何をするのかにかかっていると思います。

2012年7月
長谷川 靖志